【理想のプロポーズ】


夏花(ナツカ)♀
亮平(リョウヘイ)♂





   in 酒屋


夏花  あーもー!!むーかーつーくー!!

亮平  落ち着けって

夏花  これが落ち着いてられるもんですか!!
    なんであたしが、あの性格最悪女のゆり子に結婚を先越されないといけないの?!

亮平  あー・・・


   夏花、ぐいっと酒を飲み干す


夏花  お兄さーん、ビール追加ー

亮平  ちょっと、飲みすぎだって

夏花  うるさい!・・・くそぅ・・・あいつったら、あの気持ちわるーい甲高い声で、
    (声を変えて)『夏花さん、私、来月結婚致しますのぉ。式はハワイで挙げるつもりですのよぉ。
    あ、そういえば、夏花さんって結婚まだでしたっけぇ?彼氏さんとうまくいってないのかしらぁ?
    私で宜しければ、いつでも相談乗りますわよぉ。
    何せ、私今、幸せ真っ只中ですものぉ!オーホッホッホッホッホッホッ!』
    ・・・・・ってぇ、あああああ腹立つううううううううう!!ムキィイイイ!!

亮平  ちょっ、他のお客さんの視線が痛い!


   店員、ビールを持ってくる


亮平  あ、すいません。ほら、落ち着けって

夏花  んー?


   夏花、ビールを一気に飲み干す


亮平  あぁ、そんな一気に飲んだら・・・


   夏花、グラスをどんっと勢いよくテーブルに置く

   ここから夏花の呂律がまわらなくなる(出来れば)


夏花  ・・・それもこれもぉ・・・あんたのせいなんだからね!!

亮平  はぁ?!

夏花  あんたが・・・あんたがいつまで経っても・・・・・プロポーズしないから!!

亮平  えぇ?!

夏花  そんなヘタレだから、ゆり子なんかに先越されるのよー!!

亮平  えぇー。そんな理不尽な・・・

夏花  ってことで、今プロポーズして

亮平  は?

夏花  今!ここで!プロポーズして!!

亮平  はいぃ?!いや、ちょ・・・まてまてまてまて!!

夏花  何よ

亮平  や、ほら、その・・・そーゆーのはさ、なんつーか、タイミングというか・・・

夏花  だから今、ヘタレのあんたのために、あたしがタイミング作ってあげたじゃない

亮平  えぇー。いや、だからさ、あー・・・なんて言うかなー・・・・・

夏花  んー?

亮平  ほら・・・えーと・・・・・あ!ムード!!そう!ムードとかさ、大事じゃね!?

夏花  大丈夫、あたしは気にしない。次

亮平  いやいやいやいや!!俺が気にするから!!

夏花  じゃあ、どうしろって言うのよ?!

亮平  逆ギレ?!

夏花  ・・・・・亮平は・・・

亮平  ん?

夏花  亮平はあたしと結婚したくないの?

亮平  え?

夏花  ・・・ひくっ・・・ひくっ・・・

亮平  ・・・はぁー(ため息)。したいに決まってるだろ?
    だけどな、夏花。物事には順序があってだな、そのぉ・・・・・

夏花  ・・・・・ぃぃ・・・

亮平  へ?

夏花  ・・・もういい

亮平  え?もういいって・・・

夏花  もういい!あたしがする!

亮平  は?

夏花  あたしがプロポーズする!!

亮平  え?ちょ・・・はいぃぃい?!

夏花  亮平!!

亮平  は、はい!!って違う!

夏花  あたしと!!

亮平  ちょ、まて!!

夏花  結婚・・・

亮平  まてって!!

夏花  してくだ・・・

亮平  (夏花の言葉を遮って)まて―――!!(大声)

夏花  ・・・・・

亮平  はぁ・・・はぁ・・・

夏花  ・・・・・

亮平  ・・・・・ふぅ・・・分かった

夏花  へ?

亮平  分かったよ。俺がプロポーズする

夏花  亮平?

亮平  本当はさ、もともと今日、この後プロポーズする予定だったし

夏花  え?


   亮平、ポケットから小さな箱を出し、コトンとテーブルに置く


夏花  あ・・・・・

亮平  すー・・・はあああ(深呼吸)・・・・・夏花

夏花  ・・・・・

亮平  俺と・・・あー・・・・・俺と、け、結婚してください!!

夏花  亮平・・・・・はい・・・

亮平  ・・・・・ふっ・・・へへ

夏花  ふふ・・・・・


   亮平、箱から指輪を取り出す


亮平  夏花、手、出して

夏花  ・・・うん


   亮平、夏花の指に指輪をはめる


亮平  一緒に幸せになろうな

夏花  うん・・・


   二人、抱き合う


亮平  ・・・・・ん?夏花?

夏花  ・・・すー・・・すー・・・(寝息)

亮平  ・・・え?寝てる?

夏花  ・・・すー・・・すー・・・

亮平  はぁー(ため息)、まじかよ。このタイミングで寝るって・・・ほんっとに、ムードねぇよ

夏花  ・・・ん・・・むにゃ・・・

亮平  ん?

夏花  ・・・・・りょーへー・・・ふふ・・・・・すー・・・すー・・・

亮平  ・・・・・ま、いっか。・・・てか俺、酒屋で恥ずかしいな・・・・・あ、ども。ははは・・・・・





   −翌日−    亮平、寝てる


亮平  ・・・・・


   携帯が鳴る


亮平  ・・・ん・・・・・誰だ、こんな朝っぱらから・・・ん、夏花?・・・・・なんか・・・いやーな予感・・・・・


   亮平、電話に出る


亮平  はい、もしも・・・

夏花  (亮平の言葉を遮って)もしもし、亮平?!どうしよう!!なんか起きたら薬指に指輪はまってた!!
    なんでだろ?!ねぇ!!どうしよう亮平!!

亮平  ・・・・・え?





   −END−